シノクロス

1988年10月23日、京都競馬場のローズＳ(G2)に、２歳女王のシノクロスが出走してきました。

秋のエリザベス女王杯で悲願のＧ１制覇を果たすため、ここは力試しの重要なレースです。

京成杯３歳Ｓ、テレビ東京賞３歳Ｓと重賞を連覇して最優秀３歳(２歳)牝馬に選出されましたが、

桜花賞は３番人気で７着，オークスは５番人気で１８着に終わり、

Ｇ１制覇の夢を叶えることはできませんでした。

同じシービークロス産駒のタマモクロスが日本最強馬への階段を登り詰めていく中、

一方のシノクロスは、対照的に成績は下降していきました。

繊細な彼女は、すでに疲れ切っていたのでしょう。

激しい競走で心身をすり減らすのも、もう限界に達していました。

このローズＳでも１２着と見せ場なく終わってしまいました。

それでもまだファンの期待を背負うシノクロスは、

本番のエリザベス女王杯でも５番人気の支持を受けました。

エリザベス女王杯では、今までにない好位付けの積極策で勝負を賭けましたが、

直線失速して１６着に終わってしまいました。

「本当によく頑張ったね。もうこれ以上頑張らなくていいんだよ。」

それでも、その後もシノクロスは頑張り続けました。

４歳になった年明けのオープン特別のニューイヤーＳでは、

古馬男馬相手に、頭,首,頭,頭差の接戦の５着と大いに見せ場を作ります。

しかしながら、この年の夏の函館戦を最後に引退するまで、

決して大きく負けてはいなかったものの、再び彼女らしい走りを見せることはできませんでした。

お母さんになるために北海道に帰ったシノクロスは、

人々の温かい愛情に包まれながら、お母さんとしても頑張りました。

そしてその子供たち、孫たちも多くの夢と感動を与えてくれています。

本当によく頑張ったね。本当にありがとう。