タマモクロス(2)

1989年1月15日、この日の京都競馬場では、昼休みにタマモクロスの引退式が行われました。

天皇賞・秋では、競馬史上に残る名勝負の末

宿敵オグリキャップを寄せつけず見事に優勝しましたが、

その後は、 ジャパンＣで米国のペイサバトラーに惜敗の２着。

最後の有馬記念でも、オグリキャップとの叩き合いに僅かに競り負けて２着に終わりました。

それでも有馬記念では、体調を崩して出走さえ危ぶまれる状態で、

しかもスタートが悪く後方で厳しいレース展開を強いられながら、

本当によく頑張って走ってくれました。

この日、白い稲妻二世タマモクロスは、

多くのファンに惜しまれながら、引退の日を迎えたのです。

タマモクロスに跨るのもこれが最後となる南井騎手は、馬上で涙を流して男泣きし、

タマモクロスの調教に苦労の日々を重ねてきた井高調教助手も、

感極まって声を詰まらせ、見守っていたファンから温かい拍手を受けていました。

輝かしい功績を残した競走馬タマモクロスとの最後の別れに、

ファンの中には涙を流す人さえいました。

タマモクロスからもらった多くの感動に、

「ありがとう！」と感謝の言葉を送る人もいました。

父シービークロスの引退式も、美しい引退式でしたが、

この日のタマモクロスの引退式は、涙涙の感動の引退式でした。

この後、タマモクロスはその血を次代に残すため、北海道へと旅立ちました。

まだ１８歳の若さでこの世を去ってしまったのは、早過ぎて残念でなりませんが、

北海道での生活は、多くの人たちの愛情に包まれた幸せなものでした。

そして今は天国を、空を飛ぶように気ままに駆け巡っていることでしょう…。